ふるさとの
村医の妻のつつましき櫛巻なども
なつかしきかな
[it-i064] 煙 – 二 (17)
やはらかに柳あをめる
北上の岸辺目に見ゆ
泣けとごとくに
[it-i063] 煙 – 二 (16)
石をもて追はるるごとく
ふるさとを出でしかなしみ
消ゆる時なし
[it-i062] 煙 – 二 (15)
ふるさとを出で来し子等の
相会ひて
よろこぶにまさるかなしみはなし
[it-i061] 煙 – 二 (14)
あはれかの我の教へし
子等もまた
やがてふるさとを棄てて出づるらむ
[it-i060] 煙 – 二 (13)
田も畑も売りて酒のみ
ほろびゆくふるさと人に
心寄する日
[it-i059] 煙 – 二 (12)
かにかくに渋民村は恋しかり
おもひでの山
おもひでの川
[it-i058] 煙 – 二 (11)
それとなく
郷里のことなど語り出でて
秋の夜に焼く餅のにほひかな
[it-i057] 煙 – 二 (10)
このごろは
母も時時ふるさとのことを言ひ出づ
秋に入れるなり
[it-i056] 煙 – 二 (9)
飴売のチャルメラ聴けば
うしなひし
をさなき心ひろへるごとし