[hs-t33] くさつた蛤 – ありあけ

ながい疾患のいたみから、
その顔はくもの巣だらけとなり、
腰からしたは影のやうに消えてしまひ、
腰からうへには薮が生え、
手が腐れ
身体いちめんがじつにめちやくちやなり、
ああ、けふも月が出で、
有明の月が空に出で、
そのぼんぼりのやうなうすらあかりで、
畸形の白犬が吠えている。
しののめちかく、
さみしい道路の方で吠える犬だよ。