庭のそとを白き犬ゆけり。
ふりむきて、
犬を飼はむと妻にはかれる。
Monthly Archives: 6月 1912
[it-k189] 縁先にまくら出させて
縁先にまくら出させて、
ひさしぶりに、
ゆふべの空にしたしめるかな。
[it-k188] クリストを人なりといへば
クリストを人なりといへば、
妹の眼がかなしくも、
われをあはれむ。
[it-k187] ひる寝せし児の枕辺に
ひる寝せし児の枕辺に
人形を買ひ来てかざり、
ひとり楽しむ。
[it-k186] 秋近し!
秋近し!
電燈の球のぬくもりの
さはれば指の皮膚に親しき。
[it-k185] 何がなしに
何がなしに
肺が小さくなれる如く思ひて起きぬ――
秋近き朝。
[it-k184] 児を叱れば
児を叱れば、
泣いて、寝入りぬ。
口すこしあけし寝顔にさはりてみるかな。
[it-k183] 買ひおきし
買ひおきし
薬つきたる朝に来し
友のなさけの為替のかなしさ。
[it-k182] やまひ癒えず
やまひ癒えず、
死なず、
日毎にこころのみ険しくなれる七八月かな。
[it-k181] 今日ひょっと近所の子等と遊びたくなり
今日ひょっと近所の子等と遊びたくなり、
呼べど来らず。
こころむづかし。