病のごと
思郷のこころ湧く日なり
目にあをぞらの煙かなしも
Category Archives: 一握の砂
[it-i002] 煙 – 一 (2)
己が名をほのかに呼びて
涙せし
十四の春にかへる術なし
[it-i003] 煙 – 一 (3)
青空に消えゆく煙
さびしくも消えゆく煙
われにし似るか
[it-i004] 煙 – 一 (4)
かの旅の汽車の車掌が
ゆくりなくも
我が中学の友なりしかな
[it-i005] 煙 – 一 (5)
ほとばしる喞筒の水の
心地よさよ
しばしは若きこころもて見る
[it-i006] 煙 – 一 (6)
師も友も知らで責めにき
謎に似る
わが学業のおこたりの因
[it-i007] 煙 – 一 (7)
教室の窓より遁げて
ただ一人
かの城址に寝に行きしかな
[it-i008] 煙 – 一 (8)
不来方のお城の草に寝ころびて
空に吸はれし
十五の心
[it-i009] 煙 – 一 (9)
かなしみといはばいふべき
物の味
我の嘗めしはあまりに早かり
[it-i010] 煙 – 一 (10)
晴れし空仰げばいつも
口笛を吹きたくなりて
吹きてあそびき