やまひある獣のごとき
わがこころ
ふるさとのこと聞けばおとなし
Category Archives: 短歌
[it-k134] はづれまで一度ゆきたしと
はづれまで一度ゆきたしと
思ひゐし
かの病院の長廊下かな。
[it-k015] 二晩おきに
二晩おきに、
夜の一時頃に切通の坂を上りしも――
勤めなればかな。
[it-k173] 五歳になる子に、何故ともなく
五歳になる子に、何故ともなく、
ソニヤといふ露西亜名をつけて、
呼びてはよろこぶ。
[it-k177] ある日、ふと、やまひを忘れ
ある日、ふと、やまひを忘れ、
牛の啼く真似をしてみぬ、――
妻子の留守に。
[it-k136] 堅く握るだけの力も無くなりし
堅く握るだけの力も無くなりし
やせし我が手の
いとほしさかな。
[it-k069] 何故かうかとなさけなくなり
何故かうかとなさけなくなり、
弱い心を何度も叱り、
金かりに行く。
[it-i115] 忘れがたき人人 – 一 (14)
あたらしき洋書の紙の
香をかぎて
一途に金を欲しと思ひしが
[it-k017] 今日もまた酒のめるかな!
今日もまた酒のめるかな!
酒のめば
胸のむかつく癖を知りつつ。
[it-k095] 病院に入りて初めての夜といふに
病院に入りて初めての夜といふに、
すぐ寝入りしが、
物足らぬかな。