その昔
小学校の柾屋根に我が投げし鞠
いかにかなりけむ
Category Archives: 短歌
[it-i007] 煙 – 一 (7)
教室の窓より遁げて
ただ一人
かの城址に寝に行きしかな
[it-i203] 忘れがたき人人 – 一 (102)
十年まへに作りしといふ漢詩を
酔へば唱へき
旅に老いし友
[it-k149] 病みて四月
病みて四月――
そのときどきに変りたる
くすりの味もなつかしきかな。
病みて四月――
その間にも、猶、目に見えて、
わが子の背丈のびしかなしみ。
[it-k010] いつまでも歩いてゐねばならぬごとき
いつまでも歩いてゐねばならぬごとき
思ひ湧き来ぬ、
深夜の町町。
[it-k063] 人とともに事をはかるに
人とともに事をはかるに
適せざる、
わが性格を思ふ寝覚かな。
[it-k003] 途中にてふと気が変り
途中にてふと気が変り、
つとめ先を休みて、今日も、
河岸をさまよへり。
[it-k115] 人間のその最大のかなしみが
人間のその最大のかなしみが
これかと
ふっと目をばつぶれる。
[it-i105] 忘れがたき人人 – 一 (4)
函館の床屋の弟子を
おもひ出でぬ
耳剃らせるがこころよかりし
[it-k009] 痛む歯をおさへつつ
痛む歯をおさへつつ、
日が赤赤と、
冬の靄の中にのぼるを見たり。