なつかしき
故郷にかへる思ひあり、
久し振りにて汽車に乗りしに。
Category Archives: 石川啄木
[it-k019] すっきりと酔ひのさめたる心地よさよ!
すっきりと酔ひのさめたる心地よさよ!
夜中に起きて、
墨を磨るかな。
[it-k166] 放たれし女のごとく
放たれし女のごとく、
わが妻の振舞ふ日なり。
ダリヤを見入る。
[it-k139] 新しきからだを欲しと思ひけり
新しきからだを欲しと思ひけり、
手術の傷の
痕を撫でつつ。
[it-k087] 重い荷を下したやうな
重い荷を下したやうな、
気持なりき、
この寝台の上に来ていねしとき。
[it-k010] いつまでも歩いてゐねばならぬごとき
いつまでも歩いてゐねばならぬごとき
思ひ湧き来ぬ、
深夜の町町。
[it-k100] ぼんやりとした悲しみが
ぼんやりとした悲しみが、
夜となれば、
寝台の上にそっと来て乗る。
[it-k096] 何となく自分をえらい人のやうに
何となく自分をえらい人のやうに
思ひてゐたりき。
子供なりしかな。
[it-k131] ふるさとの寺の畔の
ふるさとの寺の畔の
ひばの木の
いただきに来て啼きし閑古鳥!
[it-k182] やまひ癒えず
やまひ癒えず、
死なず、
日毎にこころのみ険しくなれる七八月かな。