脈をとる手のふるひこそ
かなしけれ――
医者に叱られし若き看護婦!
Category Archives: 石川啄木
[it-k186] 秋近し!
秋近し!
電燈の球のぬくもりの
さはれば指の皮膚に親しき。
[it-k014] 途中にて乗換の電車なくなりしに
途中にて乗換の電車なくなりしに、
泣かうかと思ひき。
雨も降りてゐき。
[it-k104] 看護婦の徹夜するまで
看護婦の徹夜するまで、
わが病ひ、
わるくなれとも、ひそかに願へる。
[it-k054] 神様と議論して泣きし
神様と議論して泣きし――
あの夢よ!
四日ばかりも前の朝なりし。
[it-k044] ぢりぢりと
ぢりぢりと、
蝋燭の燃えつくるごとく、
夜となりたる大晦日かな。
[it-k177] ある日、ふと、やまひを忘れ
ある日、ふと、やまひを忘れ、
牛の啼く真似をしてみぬ、――
妻子の留守に。
[it-k150] すこやかに
すこやかに、
背丈のびゆく子を見つつ、
われの日毎にさびしきは何ぞ。
[it-k129] ふるさとを出でて五年
ふるさとを出でて五年、
病をえて、
かの閑古鳥を夢にきけるかな。
[it-k083] 生れたといふ葉書みて
生れたといふ葉書みて、
ひとしきり、
顔をはれやかにしてゐたるかな。