川辺で鳴つている
芦や葦のさやさやといふ音はさびしい
しぜんに生えてる
するどい ちひさな植物 草本の茎の類はさびしい
私は眼を閉じて
なにかの草の根を噛まうとする
なにかの草の汁をすふために 憂愁の苦い汁をすふために
げにそこにはなにごとの希望もない
生活はただ無意味な憂欝の連なりだ
梅雨だ
じめじめとした雨の点滴のやうなものだ
しかし ああ また雨! 雨! 雨!
そこには生える不思議の草本
あまたの悲しい羽虫の類
それは憂欝に這ひまはる 岸辺にそうて這ひまはる
じめじめとした川の岸辺を行くものは
ああこの光るいのちの葬列か
光る精神の病霊か
物みなしぜんに腐れゆく岸辺の草むら
雨に光る木材質のはげしき匂ひ。