泣くがごと首ふるはせて
手の相を見せよといひし
易者もありき
Category Archives: 一握の砂
[it-i142] 忘れがたき人人 – 一 (41)
いささかの銭借りてゆきし
わが友の
後姿の肩の雪かな
[it-i143] 忘れがたき人人 – 一 (42)
世わたりの拙きことを
ひそかにも
誇りとしたる我にやはあらぬ
[it-i144] 忘れがたき人人 – 一 (43)
汝が痩せしからだはすべて
謀叛気のかたまりなりと
いはれてしこと
[it-i145] 忘れがたき人人 – 一 (44)
かの年のかの新聞の
初雪の記事を書きしは
我なりしかな
[it-i146] 忘れがたき人人 – 一 (45)
椅子をもて我を撃たむと身構へし
かの友の酔ひも
今は醒めつらむ
[it-i147] 忘れがたき人人 – 一 (46)
負けたるも我にてありき
あらそひの因も我なりしと
今は思へり
[it-i148] 忘れがたき人人 – 一 (47)
殴らむといふに
殴れとつめよせし
昔の我のいとほしきかな
[it-i149] 忘れがたき人人 – 一 (48)
汝三度
この咽喉に剣を擬したりと
彼告別の辞に言へりけり
[it-i150] 忘れがたき人人 – 一 (49)
あらそひて
いたく憎みて別れたる
友をなつかしく思ふ日も来ぬ