あはれかの眉の秀でし少年よ
弟と呼べば
はつかに笑みしが
Category Archives: 一握の砂
[it-i152] 忘れがたき人人 – 一 (51)
わが妻に着物縫はせし友ありし
冬早く来る
植民地かな
[it-i153] 忘れがたき人人 – 一 (52)
平手もて
吹雪にぬれし顔を拭く
友共産を主義とせりけり
[it-i154] 忘れがたき人人 – 一 (53)
酒のめば鬼のごとくに青かりし
大いなる顔よ
かなしき顔よ
[it-i155] 忘れがたき人人 – 一 (54)
樺太に入りて
新しき宗教を創めむといふ
友なりしかな
[it-i156] 忘れがたき人人 – 一 (55)
治まれる世の事無さに
飽きたりといひし頃こそ
かなしかりけれ
[it-i157] 忘れがたき人人 – 一 (56)
共同の薬屋開き
儲けむといふ友なりき
詐欺せしといふ
[it-i158] 忘れがたき人人 – 一 (57)
あをじろき頬に涙を光らせて
死をば語りき
若き商人
[it-i159] 忘れがたき人人 – 一 (58)
子を負ひて
雪の吹き入る停車場に
われ見送りし妻の眉かな
[it-i160] 忘れがたき人人 – 一 (59)
敵として憎みし友と
やや長く手をば握りき
わかれといふに