呻噛み
夜汽車の窓に別れたる
別れが今は物足らぬかな
Category Archives: 一握の砂
[it-i132] 忘れがたき人人 – 一 (31)
雨に濡れし夜汽車の窓に
映りたる
山間の町のともしびの色
[it-i133] 忘れがたき人人 – 一 (32)
雨つよく降る夜の汽車の
たえまなく雫流るる
窓硝子かな
[it-i134] 忘れがたき人人 – 一 (33)
真夜中の
倶知安駅に下りゆきし
女の鬢の古き痍あと
[it-i135] 忘れがたき人人 – 一 (34)
札幌に
かの秋われの持てゆきし
しかして今も持てるかなしみ
[it-i136] 忘れがたき人人 – 一 (35)
アカシヤの街にポプラに
秋の風
吹くがかなしと日記に残れり
[it-i137] 忘れがたき人人 – 一 (36)
しんとして幅広き街の
秋の夜の
玉蜀黍の焼くるにほひよ
[it-i138] 忘れがたき人人 – 一 (37)
わが宿の姉と妹のいさかひに
初夜過ぎゆきし
札幌の雨
[it-i139] 忘れがたき人人 – 一 (38)
石狩の美国といへる停車場の
柵に乾してありし
赤き布片かな
[it-i140] 忘れがたき人人 – 一 (39)
かなしきは小樽の町よ
歌ふことなき人人の
声の荒さよ