この感情の伸びてゆくありさま
まつすぐに伸びてゆく喬木のやうに
いのちの芽生のぐんぐんとのびる。
そこの青空へもせいのびをすればとどくやうに
せいも高くなり胸はばもひろくなつた。
たいそううららかな春の空気をすひこんで
小鳥たちが喰べものをたべるやうに
愉快で口をひらいてかはゆらしく
どんなにいのちの芽生たちが伸びてゆくことか。
草木は草木でいつさいに
ああ どんなにぐんぐんと伸びてゆくことか。
ひろびろとした野原にねころんで
まことに愉快な夢をみつづけた。
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[hs-a44] 閑雅な食慾 – 囀鳥
軟風のふく日
暗欝な思惟にしづみながら
しづかな木立の奥で落葉する路を歩いていた。
天気はさつぱりと晴れて
赤松の梢にたかく囀鳥の騒ぐをみた
愉快な小鳥は胸をはつて
ふたたび情緒の調子をかへた。
ああ 過去の私の欝陶しい瞑想から 環境から
どうしてけふの情感をひるがへさう
かつてなにものすら失つていない
人生においてすら。
人生においてすら 私の失つたのは快適だけだ
ああしかし あまりにひさしく快適を失つている。