花散れば
先づ人さきに白の服着て家出づる
我にてありしか

世わたりの拙きことを
ひそかにも
誇りとしたる我にやはあらぬ

盛岡の中学校の
露台の
欄干に最一度我を倚らしめ

かの年のかの新聞の
初雪の記事を書きしは
我なりしかな

石ひとつ
坂をくだるがごとくにも
我けふの日に到り着きたる

椅子をもて我を撃たむと身構へし
かの友の酔ひも
今は醒めつらむ

蘇峯の書を我に薦めし友早く
校を退きぬ
まづしさのため

負けたるも我にてありき
あらそひの因も我なりしと
今は思へり

おどけたる手つきをかしと
我のみはいつも笑ひき
博学の師を

殴らむといふに
殴れとつめよせし
昔の我のいとほしきかな