春夏すぎて手は琥珀、
瞳は水盤にぬれ、
石はらんすい、
いちいちに愁ひをくんず、
みよ山水のふかまに、
ほそき滝ながれ、
滝ながれ、
ひややかに魚介はしづむ。
Tag Archives: 石
[it-k031] 今日ひょいと山が恋しくて
今日ひょいと山が恋しくて
山に来ぬ。
去年腰掛けし石をさがすかな。
[it-i014] 煙 – 一 (14)
城址の
石に腰掛け
禁制の木の実をひとり味ひしこと
[it-i025] 煙 – 一 (25)
石ひとつ
坂をくだるがごとくにも
我けふの日に到り着きたる
[it-i053] 煙 – 二 (6)
ふるさとの
かの路傍のすて石よ
今年も草に埋もれしらむ
[it-i063] 煙 – 二 (16)
石をもて追はるるごとく
ふるさとを出でしかなしみ
消ゆる時なし
[it-i013] 煙 – 一 (13)
われと共に
小鳥に石を投げて遊ぶ
後備大尉の子もありしかな
[st-w38] 四 深林の逍遥、其他 – 三
今しもわたる深山かぜ
春はしづかに吹きかよふ
林の簫の音をきけば
風のしらべにさそはれて
みれどもあかぬ白妙の
雲の羽袖の深山木の
千枝にかゝりたちはなれ
わかれ舞ひゆくすがたかな
樹々をわたりて行く雲の
しばしと見ればあともなき
高き行衛にいざなはれ
千々にめぐれる巌影の
花にも迷ひ石に倚り
流るゝ水の音をきけば
山は危ふく石わかれ
削りてなせる青巌に
砕けて落つる飛潭の
湧きくる波の瀬を早み
花やかにさす春の日の
光炯照りそふ水けぶり
独り苔むす岩を攀じ
ふるふあゆみをふみしめて
浮べる雲をうかゞへば
下にとゞろく飛潭の
澄むいとまなき岩波は
落ちていづくに下るらん
山精
なにをいざよふ
むらさきの
ふかきはやしの
はるがすみ
なにかこひしき
いはかげを
ながれていづる
いづみがは
木精
かくれてうたふ
野の山の
こえなきこえを
きくやきみ
つゝむにあまる
はなかげの
水のしらべを
しるやきみ
山精
あゝながれつゝ
こがれつゝ
うつりゆきつゝ
うごきつゝ
あゝめぐりつゝ
かへりつゝ
うちわらひつゝ
むせびつゝ
木精
いまひのひかり
はるがすみ
いまはなぐもり
はるのあめ
あゝあゝはなの
つゆに酔ひ
ふかきはやしに
うたへかし