顔とこゑ
それのみ昔に変らざる友にも会ひき
国の果にて
Monthly Archives: 12月 1910
[it-i183] 忘れがたき人人 – 一 (82)
こほりたるインクの罎を
火に翳し
涙ながれぬともしびの下
[it-i182] 忘れがたき人人 – 一 (81)
しらしらと氷かがやき
千鳥なく
釧路の海の冬の月かな
[it-i181] 忘れがたき人人 – 一 (80)
さいはての駅に下り立ち
雪あかり
さびしき町にあゆみ入りにき
[it-i180] 忘れがたき人人 – 一 (79)
何事も思ふことなく
日一日
汽車のひびきに心まかせぬ
[it-i179] 忘れがたき人人 – 一 (78)
遠くより
笛ながながとひびかせて
汽車今とある森林に入る
[it-i178] 忘れがたき人人 – 一 (77)
雪のなか
処処に屋根見えて
煙突の煙うすくも空にまよへり
[it-i177] 忘れがたき人人 – 一 (76)
うたふごと駅の名呼びし
柔和なる
若き駅夫の眼をも忘れず
[it-i176] 忘れがたき人人 – 一 (75)
いたく汽車に疲れて猶も
きれぎれに思ふは
我のいとしさなりき
[it-i175] 忘れがたき人人 – 一 (74)
寂莫を敵とし友とし
雪のなかに
長き一生を送る人もあり