若草の上をあるいているとき、
わたしの靴は白い足あとをのこしてゆく、
ほそいすてつきの銀が草でみがかれ、
まるめてぬいだ手ぶくろが宙でおどつて居る、
ああすつぱりといつさいの憂愁をなげだして、
わたしは柔和の羊になりたい、
しつとりとした貴女のくびに手をかけて、
あたらしいあやめおしろいのにほひをかいで居たい、
若くさの上をあるいているとき、
わたしは五月の貴公子である。
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[hs-a54] 艶めける霊魂 – 春宵
嫋めかしくも媚ある風情を
しつとりとした襦袢につつむ
くびれたごむの 跳ねかへす若い肉体を
こんなに近く抱いてるうれしさ
あなたの胸は鼓動にたかまり
その手足は肌にふれ
ほのかにつめたく やさしい感触の匂ひをつたふ。
ああこの溶けてゆく春夜の灯かげに
厚くしつとりと化粧されたる
ひとつの白い額をみる
ちひさな可愛いくちびるをみる
まぼろしの夢に浮んだ顔をながめる。
春夜のただよふ靄の中で
わたしはあなたの思ひをかぐ
あなたの思ひは愛にめざめて
ぱつちりとひらいた黒い瞳は
夢におどろき
みしらぬ歓楽をあやしむやうだ。
しづかな情緒のながれを通つて
ふたりの心にしみゆくもの
ああこのやすらかな やすらかな
すべてを愛に 希望にまかせた心はどうだ。
人生の春のまたたく灯かげに
嫋めかしくも媚ある肉体を
こんなに近く抱いてるうれしさ
処女のやはらかな肌のにほひは
花園にそよげるばらのやうで
情愁のなやましい性のきざしは
桜のはなの咲いたやうだ。
[it-k064] 自分よりも年若き人に
自分よりも年若き人に、
半日も気焔を吐きて、
つかれし心!
[it-k057] おれが若しこの新聞の主筆ならば
おれが若しこの新聞の主筆ならば、
やらむ――と思ひし
いろいろの事!
[it-k132] 脈をとる手のふるひこそ
脈をとる手のふるひこそ
かなしけれ――
医者に叱られし若き看護婦!
[it-i129] 忘れがたき人人 – 一 (28)
若くして
数人の父となりし友
子なきがごとく酔へばうたひき
[it-i158] 忘れがたき人人 – 一 (57)
あをじろき頬に涙を光らせて
死をば語りき
若き商人
[it-i177] 忘れがたき人人 – 一 (76)
うたふごと駅の名呼びし
柔和なる
若き駅夫の眼をも忘れず
[it-i005] 煙 – 一 (5)
ほとばしる喞筒の水の
心地よさよ
しばしは若きこころもて見る
[it-i019] 煙 – 一 (19)
夏休み果ててそのまま
かへり来ぬ
若き英語の教師もありき