空知川雪に埋れて
鳥も見えず
岸辺の林に人ひとりゐき
Monthly Archives: 12月 1910
[it-i173] 忘れがたき人人 – 一 (72)
ごおと鳴る凩のあと
乾きたる雪舞ひ立ちて
林を包めり
[it-i172] 忘れがたき人人 – 一 (71)
水蒸気
列車の窓に花のごと凍てしを染むる
あかつきの色
[it-i171] 忘れがたき人人 – 一 (70)
今夜こそ思ふ存分泣いてみむと
泊りし宿屋の
茶のぬるさかな
[it-i170] 忘れがたき人人 – 一 (69)
伴なりしかの代議士の
口あける青き寐顔を
かなしと思ひき
[it-i169] 忘れがたき人人 – 一 (68)
名のみ知りて縁もゆかりもなき土地の
宿屋安けし
我が家のごと
[it-i168] 忘れがたき人人 – 一 (67)
乗合の砲兵士官の
剣の鞘
がちゃりと鳴るに思ひやぶれき
[it-i167] 忘れがたき人人 – 一 (66)
腹すこし痛み出でしを
しのびつつ
長路の汽車にのむ煙草かな
[it-i166] 忘れがたき人人 – 一 (65)
うす紅く雪に流れて
入日影
曠野の汽車の窓を照せり
[it-i165] 忘れがたき人人 – 一 (64)
忘れ来し煙草を思ふ
ゆけどゆけど
山なほ遠き雪の野の汽車