藤沢といふ代議士を
弟のごとく思ひて、
泣いてやりしかな。
Monthly Archives: 6月 1912
[it-k109] うっとりとなりて
うっとりとなりて、
剣をさげ、馬にのれる己が姿を
胸に描ける。
[it-k108] 軍人になると言ひ出して
軍人になると言ひ出して、
父母に
苦労させたる昔の我かな。
[it-k107] 今までのことを
今までのことを
みな嘘にしてみれど、
心すこしも慰まざりき。
[it-k106] もう嘘をいはじと思ひき
もう嘘をいはじと思ひき――
それは今朝――
今また一つ嘘をいへるかな。
[it-k105] 病院に来て
病院に来て、
妻や子をいつくしむ
まことの我にかへりけるかな。
[it-k104] 看護婦の徹夜するまで
看護婦の徹夜するまで、
わが病ひ、
わるくなれとも、ひそかに願へる。
[it-k103] 思ふこと盗みきかるる如くにて
思ふこと盗みきかるる如くにて、
つと胸を引きぬ――
聴診器より。
[it-k102] もうお前の心底をよく見届けたと
もうお前の心底をよく見届けたと、
夢に母来て
泣いてゆきしかな。
[it-k101] 病院の窓によりつつ
病院の窓によりつつ、
いろいろの人の
元気に歩くを眺む。