ぼんやりとした悲しみが、
夜となれば、
寝台の上にそっと来て乗る。
Monthly Archives: 6月 1912
[it-k099] びっしょりと寝汗出てゐる
びっしょりと寝汗出てゐる
あけがたの
まだ覚めやらぬ重きかなしみ。
[it-k098] 目さませば、からだ痛くて
目さませば、からだ痛くて
動かれず。
泣きたくなりて、夜明くるを待つ。
[it-k097] ふくれたる腹を撫でつつ
ふくれたる腹を撫でつつ、
病院の寝台に、ひとり、
かなしみてあり。
[it-k096] 何となく自分をえらい人のやうに
何となく自分をえらい人のやうに
思ひてゐたりき。
子供なりしかな。
[it-k095] 病院に入りて初めての夜といふに
病院に入りて初めての夜といふに、
すぐ寝入りしが、
物足らぬかな。
[it-k094] 脉をとる看護婦の手の
脉をとる看護婦の手の、
あたたかき日あり、
つめたく堅き日もあり。
[it-k093] 夜おそく何処やらの室の騒がしきは
夜おそく何処やらの室の騒がしきは
人や死にたらむと、
息をひそむる。
[it-k092] 晴れし日のかなしみの一つ!
晴れし日のかなしみの一つ!
病室の窓にもたれて
煙草を味ふ。
[it-k091] 病室の窓にもたれて
病室の窓にもたれて、
久しぶりに巡査を見たりと、
よろこべるかな。