今日はなぜか、
二度も、三度も、
金側の時計を一つ欲しと思へり。
Monthly Archives: 6月 1912
[it-k119] 寝つつ読む本の重さに
寝つつ読む本の重さに
つかれたる
手を休めては、物を思へり。
[it-k118] 病みてあれば心も弱るらむ!
病みてあれば心も弱るらむ!
さまざまの
泣きたきことが胸にあつまる。
[it-k117] 医者の顔色をぢっと見し外に
医者の顔色をぢっと見し外に
何も見ざりき――
胸の痛み募る日。
[it-k116] 廻診の医者の遅さよ!
廻診の医者の遅さよ!
痛みある胸に手をおきて
かたく眼をとづ。
[it-k115] 人間のその最大のかなしみが
人間のその最大のかなしみが
これかと
ふっと目をばつぶれる。
[it-k114] 春の雪みだれて降るを
春の雪みだれて降るを
熱のある目に
かなしくも眺め入りたる。
[it-k113] 氷嚢の下より
氷嚢の下より
まなこ光らせて、
寝られぬ夜は人をにくめる。
[it-k112] ぢっとして寝ていらっしゃいと
ぢっとして寝ていらっしゃいと
子供にでもいふがごとくに
医者のいふ日かな。
[it-k111] 何か一つ
何か一つ
大いなる悪事しておいて、
知らぬ顔してゐたき気持かな。