はづれまで一度ゆきたしと
思ひゐし
かの病院の長廊下かな。
Author Archives: 石川啄木
[it-k135] 起きてみて
起きてみて、
また直ぐ寝たくなる時の
力なき眼に愛でしチュリップ!
[it-k136] 堅く握るだけの力も無くなりし
堅く握るだけの力も無くなりし
やせし我が手の
いとほしさかな。
[it-k145] かかる目に
かかる目に
すでに幾度会へることぞ!
成るがままに成れと今は思ふなり。
[it-k144] やや遠きものに思ひし
やや遠きものに思ひし
テロリストの悲しき心も――
近づく日のあり。
[it-k143] 友も妻もかなしと思ふらし
友も妻もかなしと思ふらし――
病みても猶、
革命のこと口に絶たねば。
[it-k142] いつとなく我にあゆみ寄り
いつとなく我にあゆみ寄り、
手を握り、
またいつとなく去りゆく人人!
[it-k141] ボロオヂンといふ露西亜名が
ボロオヂンといふ露西亜名が、
何故ともなく、
幾度も思ひ出さるる日なり。
[it-k140] 薬のむことを忘るるを
薬のむことを忘るるを、
それとなく、
たのしみに思ふ長病かな。
[it-k139] 新しきからだを欲しと思ひけり
新しきからだを欲しと思ひけり、
手術の傷の
痕を撫でつつ。