かなしくも、
病いゆるを願はざる心我に在り。
何の心ぞ。
Author Archives: 石川啄木
[it-k137] わが病の
わが病の
その因るところ深く且つ遠きを思ふ。
目をとぢて思ふ。
[it-k124] 子を叱る、あはれ、この心よ
子を叱る、あはれ、この心よ。
熱高き日の癖とのみ
妻よ、思ふな。
[it-k123] あたらしきサラドの色の
あたらしきサラドの色の
うれしさに、
箸をとりあげて見は見つれども――
[it-k122] 胸いたみ
胸いたみ、
春の霙の降る日なり。
薬に噎せて、伏して眼をとづ。
[it-k109] うっとりとなりて
うっとりとなりて、
剣をさげ、馬にのれる己が姿を
胸に描ける。
[it-k108] 軍人になると言ひ出して
軍人になると言ひ出して、
父母に
苦労させたる昔の我かな。
[it-k107] 今までのことを
今までのことを
みな嘘にしてみれど、
心すこしも慰まざりき。
[it-k106] もう嘘をいはじと思ひき
もう嘘をいはじと思ひき――
それは今朝――
今また一つ嘘をいへるかな。
[it-k105] 病院に来て
病院に来て、
妻や子をいつくしむ
まことの我にかへりけるかな。