さいはての駅に下り立ち
雪あかり
さびしき町にあゆみ入りにき
Category Archives: 一握の砂
[it-i182] 忘れがたき人人 – 一 (81)
しらしらと氷かがやき
千鳥なく
釧路の海の冬の月かな
[it-i183] 忘れがたき人人 – 一 (82)
こほりたるインクの罎を
火に翳し
涙ながれぬともしびの下
[it-i184] 忘れがたき人人 – 一 (83)
顔とこゑ
それのみ昔に変らざる友にも会ひき
国の果にて
[it-i185] 忘れがたき人人 – 一 (84)
あはれかの国のはてにて
酒のみき
かなしみの滓を啜るごとくに
[it-i186] 忘れがたき人人 – 一 (85)
酒のめば悲しみ一時に湧き来るを
寐て夢みぬを
うれしとはせし
[it-i187] 忘れがたき人人 – 一 (86)
出しぬけの女の笑ひ
身に沁みき
厨に酒の凍る真夜中
[it-i188] 忘れがたき人人 – 一 (87)
わが酔ひに心いためて
うたはざる女ありしが
いかになれるや
[it-i189] 忘れがたき人人 – 一 (88)
小奴といひし女の
やはらかき
耳朶なども忘れがたかり
[it-i190] 忘れがたき人人 – 一 (89)
よりそひて
深夜の雪の中に立つ
女の右手のあたたかさかな