猫のやうに憂欝な景色である
さびしい風船はまつすぐに昇つてゆき
りんねるを着た人物がちらちらと居るではないか。
もうとつくにながい間
だれもこんな波止場を思つてみやしない。
さうして荷揚げ機械のばうぜんとしている海角から
いろいろさまざまな生物意識が消えて行つた。
そのうへ帆船には綿が積まれて
それが沖の方でむくむくと考へこんでいるではないか。
なんと言ひやうもない
身の毛もよだち ぞつとするやうな思ひ出ばかりだ。
ああ神よ もうとりかへすすべもない
さうしてこんなむしばんだ回想から いつも幼な児のやうに泣いて居よう。
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[it-k154] かなしきは
かなしきは、
(われもしかりき)
叱れども、打てども泣かぬ児の心なる。
[it-k187] ひる寝せし児の枕辺に
ひる寝せし児の枕辺に
人形を買ひ来てかざり、
ひとり楽しむ。
[it-k184] 児を叱れば
児を叱れば、
泣いて、寝入りぬ。
口すこしあけし寝顔にさはりてみるかな。
[it-k078] 原稿紙にでなくては
原稿紙にでなくては
字を書かぬものと、
かたく信ずる我が児のあどけなさ!