まつ正直の心をもつて、
わたくしどもは話がしたい、
信仰からきたるものは、
すべて幽霊のかたちで視える、
かつてわたくしが視たところのものを、
はつきりと汝にもきかせたい、
およそこの類のものは、
さかんに装束せる、
光れる、
おほいなるかくしどころをもつた神の半身であつた。
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[hs-a29] さびしい青猫 – 憂欝な風景
猫のやうに憂欝な景色である
さびしい風船はまつすぐに昇つてゆき
りんねるを着た人物がちらちらと居るではないか。
もうとつくにながい間
だれもこんな波止場を思つてみやしない。
さうして荷揚げ機械のばうぜんとしている海角から
いろいろさまざまな生物意識が消えて行つた。
そのうへ帆船には綿が積まれて
それが沖の方でむくむくと考へこんでいるではないか。
なんと言ひやうもない
身の毛もよだち ぞつとするやうな思ひ出ばかりだ。
ああ神よ もうとりかへすすべもない
さうしてこんなむしばんだ回想から いつも幼な児のやうに泣いて居よう。
[it-i122] 忘れがたき人人 – 一 (21)
とるに足らぬ男と思へと言ふごとく
山に入りにき
神のごとき友
[it-i207] 忘れがたき人人 – 一 (106)
神のごと
遠く姿をあらはせる
阿寒の山の雪のあけぼの
[it-i022] 煙 – 一 (22)
神有りと言ひ張る友を
説きふせし
かの路傍の栗の樹の下
[st-w20] 二 六人の処女 – おくめ
こひしきまゝに家を出で
こゝの岸よりかの岸へ
越えましものと来て見れば
千鳥鳴くなり夕まぐれ
こひには親も捨てはてて
やむよしもなき胸の火や
鬢の毛を吹く河風よ
せめてあはれと思へかし
河波暗く瀬を早み
流れて巌に砕くるも
君を思へば絶間なき
恋の火炎に乾くべし
きのふの雨の小休なく
水嵩や高くまさるとも
よひ/\になくわがこひの
涙の滝におよばじな
しりたまはずやわがこひは
花鳥の絵にあらじかし
空鏡の印象砂の文字
梢の風の音にあらじ
しりたまはずやわがこひは
雄々しき君の手に触れて
嗚呼口紅をその口に
君にうつさでやむべきや
恋は吾身の社にて
君は社の神なれば
君の祭壇の上ならで
なににいのちを捧げまし
砕かば砕け河波よ
われに命はあるものを
河波高く泳ぎ行き
ひとりの神にこがれなん
心のみかは手も足も
吾身はすべて火炎なり
思ひ乱れて嗚呼恋の
千筋の髪の波に流るゝ