茶まで断ちて、
わが平復を祈りたまふ
母の今日また何か怒れる。
Monthly Archives: 6月 1912
[it-k179] ただ一人の
ただ一人の
をとこの子なる我はかく育てり。
父母もかなしかるらむ。
[it-k178] かなしきは我が父!
かなしきは我が父!
今日も新聞を読みあきて、
庭に小蟻と遊べり。
[it-k177] ある日、ふと、やまひを忘れ
ある日、ふと、やまひを忘れ、
牛の啼く真似をしてみぬ、――
妻子の留守に。
[it-k176] 俺ひとり下宿屋にやりてくれぬかと
俺ひとり下宿屋にやりてくれぬかと、
今日もあやふく、
いひ出でしかな。
[it-k175] 猫を飼はば
猫を飼はば、
その猫がまた争ひの種となるらむ、
かなしきわが家。
[it-k174] 解けがたき
解けがたき
不和のあひだに身を処して、
ひとりかなしく今日も怒れり。
[it-k173] 五歳になる子に、何故ともなく
五歳になる子に、何故ともなく、
ソニヤといふ露西亜名をつけて、
呼びてはよろこぶ。
[it-k172] 何か一つ騒ぎを起してみたかりし
何か一つ騒ぎを起してみたかりし、
先刻の我を
いとしと思へる。
[it-k171] 胸いたむ日のかなしみも
胸いたむ日のかなしみも、
かをりよき煙草の如く、
棄てがたきかな。