Yといふ符牒、
古日記の処処にあり――
Yとはあの人の事なりしかな。
Author Archives: 石川啄木
[it-k059] 外套の襟に頤を埋め
外套の襟に頤を埋め、
夜ふけに立どまりて聞く。
よく似た声かな。
[it-k058] 石狩の空知郡の
石狩の空知郡の
牧場のお嫁さんより送り来し
バタかな。
[it-k057] おれが若しこの新聞の主筆ならば
おれが若しこの新聞の主筆ならば、
やらむ――と思ひし
いろいろの事!
[it-k056] いろいろの人の思はく
いろいろの人の思はく
はかりかねて、
今日もおとなしく暮らしたるかな。
[it-k055] 家にかへる時間となるを
家にかへる時間となるを、
ただ一つの待つことにして、
今日も働けり。
[it-k054] 神様と議論して泣きし
神様と議論して泣きし――
あの夢よ!
四日ばかりも前の朝なりし。
[it-k053] いつしかに正月も過ぎて
いつしかに正月も過ぎて、
わが生活が
またもとの道にはまり来れり。
[it-k063] 人とともに事をはかるに
人とともに事をはかるに
適せざる、
わが性格を思ふ寝覚かな。
[it-k064] 自分よりも年若き人に
自分よりも年若き人に、
半日も気焔を吐きて、
つかれし心!