汝三度
この咽喉に剣を擬したりと
彼告別の辞に言へりけり
Author Archives: 石川啄木
[it-i148] 忘れがたき人人 – 一 (47)
殴らむといふに
殴れとつめよせし
昔の我のいとほしきかな
[it-i147] 忘れがたき人人 – 一 (46)
負けたるも我にてありき
あらそひの因も我なりしと
今は思へり
[it-i160] 忘れがたき人人 – 一 (59)
敵として憎みし友と
やや長く手をば握りき
わかれといふに
[it-i161] 忘れがたき人人 – 一 (60)
ゆるぎ出づる汽車の窓より
人先に顔を引きしも
負けざらむため
[it-i162] 忘れがたき人人 – 一 (61)
みぞれ降る
石狩の野の汽車に読みし
ツルゲエネフの物語かな
[it-i174] 忘れがたき人人 – 一 (73)
空知川雪に埋れて
鳥も見えず
岸辺の林に人ひとりゐき
[it-i173] 忘れがたき人人 – 一 (72)
ごおと鳴る凩のあと
乾きたる雪舞ひ立ちて
林を包めり
[it-i172] 忘れがたき人人 – 一 (71)
水蒸気
列車の窓に花のごと凍てしを染むる
あかつきの色
[it-i171] 忘れがたき人人 – 一 (70)
今夜こそ思ふ存分泣いてみむと
泊りし宿屋の
茶のぬるさかな