林あり、
沼あり、
蒼天あり、
ひとの手にはおもみを感じ
しづかに純金の亀ねむる、
この光る、
寂しき自然のいたみにたへ、
ひとの心霊にまさぐりしづむ、
亀は蒼天のふかみにしづむ。
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[hs-t51] 見知らぬ犬 – 海水旅館
赤松の林をこえて、
くらきおほなみはとほく光つていた、
このさびしき越後の海岸、
しばしはなにを祈るこころぞ、
ひとり夕餉ををはりて、
海水旅館の居間に灯を点ず。
くじら浪海岸にて
[it-k130] 閑古鳥
閑古鳥――
渋民村の山荘をめぐる林の
あかつきなつかし。
[it-i173] 忘れがたき人人 – 一 (72)
ごおと鳴る凩のあと
乾きたる雪舞ひ立ちて
林を包めり
[it-i174] 忘れがたき人人 – 一 (73)
空知川雪に埋れて
鳥も見えず
岸辺の林に人ひとりゐき
[st-w39] 四 深林の逍遥、其他 – 四
ゆびをりくればいつたびも
かはれる雲をながむるに
白きは黄なりなにをかも
もつ筆にせむ色彩の
いつしか淡く茶を帯びて
雲くれないとかはりけり
あゝゆふまぐれわれひとり
たどる林もひらけきて
いと静かなる湖の
岸辺にさける花躑躅
うき雲ゆけばかげ見えて
水に沈める春の日や
それ紅の色染めて
雲紫となりぬれば
かげさへあかき水鳥の
春のみづうみ岸の草
深き林や花つゝじ
迷ふひとりのわがみだに
深紫の紅の
彩にうつろふ夕まぐれ