わが酔ひに心いためて
うたはざる女ありしが
いかになれるや

出しぬけの女の笑ひ
身に沁みき
厨に酒の凍る真夜中

酒のめば悲しみ一時に湧き来るを
寐て夢みぬを
うれしとはせし

あはれかの国のはてにて
酒のみき
かなしみの滓を啜るごとくに

顔とこゑ
それのみ昔に変らざる友にも会ひき
国の果にて

こほりたるインクの罎を
火に翳し
涙ながれぬともしびの下

しらしらと氷かがやき
千鳥なく
釧路の海の冬の月かな

さいはての駅に下り立ち
雪あかり
さびしき町にあゆみ入りにき

何事も思ふことなく
日一日
汽車のひびきに心まかせぬ

遠くより
笛ながながとひびかせて
汽車今とある森林に入る