ストライキ思ひ出でても
今は早や吾が血躍らず
ひそかに淋し

夏休み果ててそのまま
かへり来ぬ
若き英語の教師もありき

今は亡き姉の恋人のおとうとと
なかよくせしを
かなしと思ふ

花散れば
先づ人さきに白の服着て家出づる
我にてありしか

病のごと
思郷のこころ湧く日なり
目にあをぞらの煙かなしも

かにかくに渋民村は恋しかり
おもひでの山
おもひでの川

朝な朝な
支那の俗歌をうたひ出づる
まくら時計を愛でしかなしみ

ふるさとの山に向ひて
言ふことなし
ふるさとの山はありがたきかな

ふるさとの停車場路の
川ばたの
胡桃の下に小石拾へり

そのかみの神童の名の
かなしさよ
ふるさとに来て泣くはそのこと