遠夜に光る松の葉に、
懺悔の涙したたりて、
遠夜の空にしも白ろき、
天上の松に首をかけ。
天上の松を恋ふるより、
祈れるさまに吊されぬ。
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[hs-a34] 閑雅な食慾 – 怠惰の暦
いくつかの季節はすぎ
もう憂欝の桜も白つぽく腐れてしまつた
馬車はごろごろと遠くをはしり
海も 田舎も ひつそりとした空気の中に眠つている
なんといふ怠惰な日だらう
運命はあとからあとからとかげつてゆき
さびしい病欝は柳の葉かげにけむつている
もう暦もない 記憶もない
わたしは燕のやうに巣立ちをし さうしてふしぎな風景のはてを翔つてゆかう。
むかしの恋よ 愛する猫よ
わたしはひとつの歌を知つてる
さうして遠い海草の焚けてる空から 爛れるやうな接吻を投げよう
ああ このかなしい情熱の外 どんな言葉も知りはしない。
[it-k169] 或る市にゐし頃の事として
或る市にゐし頃の事として、
友の語る
恋がたりに嘘の交るかなしさ。
[it-i072] 煙 – 二 (25)
大形の被布の模様の赤き花
今も目に見ゆ
六歳の日の恋
[it-i088] 煙 – 二 (41)
今日聞けば
かの幸うすきやもめ人
きたなき恋に身を入るるてふ
[it-i202] 忘れがたき人人 – 一 (101)
死にしとかこのごろ聞きぬ
恋がたき
才あまりある男なりしが
[it-i028] 煙 – 一 (28)
かぎりなき知識の慾に燃ゆる眼を
姉は傷みき
人恋ふるかと
[it-i037] 煙 – 一 (37)
先んじて恋のあまさと
かなしさを知りし我なり
先んじて老ゆ
[it-i043] 煙 – 一 (43)
近眼にて
おどけし歌をよみ出でし
茂雄の恋もかなしかりしか
[it-i046] 煙 – 一 (46)
わが恋を
はじめて友にうち明けし夜のことなど
思ひ出づる日