児を叱れば、
泣いて、寝入りぬ。
口すこしあけし寝顔にさはりてみるかな。
Author Archives: 石川啄木
[it-k003] 途中にてふと気が変り
途中にてふと気が変り、
つとめ先を休みて、今日も、
河岸をさまよへり。
[it-k002] 眼閉づれど
眼閉づれど、
心にうかぶ何もなし。
さびしくも、また、眼をあけるかな。
[it-k001] 呼吸すれば
呼吸すれば、
胸の中にて鳴る音あり。
凩よりもさびしきその音!
[it-k190] 庭のそとを白き犬ゆけり
庭のそとを白き犬ゆけり。
ふりむきて、
犬を飼はむと妻にはかれる。
[it-k189] 縁先にまくら出させて
縁先にまくら出させて、
ひさしぶりに、
ゆふべの空にしたしめるかな。
[it-k188] クリストを人なりといへば
クリストを人なりといへば、
妹の眼がかなしくも、
われをあはれむ。
[it-k187] ひる寝せし児の枕辺に
ひる寝せし児の枕辺に
人形を買ひ来てかざり、
ひとり楽しむ。
[it-k186] 秋近し!
秋近し!
電燈の球のぬくもりの
さはれば指の皮膚に親しき。
[it-k185] 何がなしに
何がなしに
肺が小さくなれる如く思ひて起きぬ――
秋近き朝。