あはれかの
眼鏡の縁をさびしげに光らせてゐし
女教師よ
Category Archives: 一握の砂
[it-i112] 忘れがたき人人 – 一 (11)
友われに飯を与へき
その友に背きし我の
性のかなしさ
[it-i113] 忘れがたき人人 – 一 (12)
函館の青柳町こそかなしけれ
友の恋歌
矢ぐるまの花
[it-i114] 忘れがたき人人 – 一 (13)
ふるさとの
麦のかをりを懐かしむ
女の眉にこころひかれき
[it-i115] 忘れがたき人人 – 一 (14)
あたらしき洋書の紙の
香をかぎて
一途に金を欲しと思ひしが
[it-i116] 忘れがたき人人 – 一 (15)
しらなみの寄せて騒げる
函館の大森浜に
思ひしことども
[it-i117] 忘れがたき人人 – 一 (16)
朝な朝な
支那の俗歌をうたひ出づる
まくら時計を愛でしかなしみ
[it-i118] 忘れがたき人人 – 一 (17)
漂泊の愁ひを叙して成らざりし
草稿の字の
読みがたさかな
[it-i119] 忘れがたき人人 – 一 (18)
いくたびか死なむとしては
死なざりし
わが来しかたのをかしく悲し
[it-i120] 忘れがたき人人 – 一 (19)
函館の臥牛の山の半腹の
碑の漢詩も
なかば忘れぬ