むやむやと
口の中にてたふとげの事を呟く
乞食もありき
Category Archives: 一握の砂
[it-i122] 忘れがたき人人 – 一 (21)
とるに足らぬ男と思へと言ふごとく
山に入りにき
神のごとき友
[it-i123] 忘れがたき人人 – 一 (22)
巻煙草口にくはへて
浪あらき
磯の夜霧に立ちし女よ
[it-i124] 忘れがたき人人 – 一 (23)
演習のひまにわざわざ
汽車に乗りて
訪ひ来し友とのめる酒かな
[it-i125] 忘れがたき人人 – 一 (24)
大川の水の面を見るごとに
郁雨よ
君のなやみを思ふ
[it-i126] 忘れがたき人人 – 一 (25)
智慧とその深き慈悲とを
もちあぐみ
為すこともなく友は遊べり
[it-i127] 忘れがたき人人 – 一 (26)
こころざし得ぬ人人の
あつまりて酒のむ場所が
我が家なりしかな
[it-i128] 忘れがたき人人 – 一 (27)
かなしめば高く笑ひき
酒をもて
悶を解すといふ年上の友
[it-i129] 忘れがたき人人 – 一 (28)
若くして
数人の父となりし友
子なきがごとく酔へばうたひき
[it-i130] 忘れがたき人人 – 一 (29)
さりげなき高き笑ひが
酒とともに
我が腸に沁みにけらしな