ふるさとの山に向ひて
言ふことなし
ふるさとの山はありがたきかな
Category Archives: 一握の砂
[it-i102] 忘れがたき人人 – 一 (1)
潮かをる北の浜辺の
砂山のかの浜薔薇よ
今年も咲けるや
[it-i103] 忘れがたき人人 – 一 (2)
たのみつる年の若さを数へみて
指を見つめて
旅がいやになりき
[it-i104] 忘れがたき人人 – 一 (3)
三度ほど
汽車の窓よりながめたる町の名なども
したしかりけり
[it-i105] 忘れがたき人人 – 一 (4)
函館の床屋の弟子を
おもひ出でぬ
耳剃らせるがこころよかりし
[it-i106] 忘れがたき人人 – 一 (5)
わがあとを追ひ来て
知れる人もなき
辺土に住みし母と妻かな
[it-i107] 忘れがたき人人 – 一 (6)
船に酔ひてやさしくなれる
いもうとの眼見ゆ
津軽の海を思へば
[it-i108] 忘れがたき人人 – 一 (7)
目を閉ぢて
傷心の句を誦してゐし
友の手紙のおどけ悲しも
[it-i109] 忘れがたき人人 – 一 (8)
をさなき時
橋の欄干に糞塗りし
話も友はかなしみてしき
[it-i110] 忘れがたき人人 – 一 (9)
おそらくは生涯妻をむかへじと
わらひし友よ
今もめとらず