寝つつ読む本の重さに
つかれたる
手を休めては、物を思へり。

堅く握るだけの力も無くなりし
やせし我が手の
いとほしさかな。

笑ふにも笑はれざりき――
長いこと捜したナイフの
手の中にありしに。

いつとなく記憶に残りぬ――
Ｆといふ看護婦の手の
つめたさなども。

手を打ちて
眠気の返事きくまでの
そのもどかしさに似たるもどかしさ！

脈をとる手のふるひこそ
かなしけれ――
医者に叱られし若き看護婦！

手も足もはなればなれにあるごとき
ものうき寝覚！
かなしき寝覚！

いつとなく我にあゆみ寄り、
手を握り、
またいつとなく去りゆく人人！