わかれ来てふと瞬けば
ゆくりなく
つめたきものの頬をつたへり
Monthly Archives: 12月 1910
[it-i163] 忘れがたき人人 – 一 (62)
わが去れる後の噂を
おもひやる旅出はかなし
死ににゆくごと
[it-i162] 忘れがたき人人 – 一 (61)
みぞれ降る
石狩の野の汽車に読みし
ツルゲエネフの物語かな
[it-i161] 忘れがたき人人 – 一 (60)
ゆるぎ出づる汽車の窓より
人先に顔を引きしも
負けざらむため
[it-i160] 忘れがたき人人 – 一 (59)
敵として憎みし友と
やや長く手をば握りき
わかれといふに
[it-i159] 忘れがたき人人 – 一 (58)
子を負ひて
雪の吹き入る停車場に
われ見送りし妻の眉かな
[it-i158] 忘れがたき人人 – 一 (57)
あをじろき頬に涙を光らせて
死をば語りき
若き商人
[it-i157] 忘れがたき人人 – 一 (56)
共同の薬屋開き
儲けむといふ友なりき
詐欺せしといふ
[it-i156] 忘れがたき人人 – 一 (55)
治まれる世の事無さに
飽きたりといひし頃こそ
かなしかりけれ
[it-i155] 忘れがたき人人 – 一 (54)
樺太に入りて
新しき宗教を創めむといふ
友なりしかな