Yといふ符牒、
古日記の処処にあり――
Yとはあの人の事なりしかな。
Monthly Archives: 6月 1912
[it-k059] 外套の襟に頤を埋め
外套の襟に頤を埋め、
夜ふけに立どまりて聞く。
よく似た声かな。
[it-k058] 石狩の空知郡の
石狩の空知郡の
牧場のお嫁さんより送り来し
バタかな。
[it-k057] おれが若しこの新聞の主筆ならば
おれが若しこの新聞の主筆ならば、
やらむ――と思ひし
いろいろの事!
[it-k056] いろいろの人の思はく
いろいろの人の思はく
はかりかねて、
今日もおとなしく暮らしたるかな。
[it-k055] 家にかへる時間となるを
家にかへる時間となるを、
ただ一つの待つことにして、
今日も働けり。
[it-k054] 神様と議論して泣きし
神様と議論して泣きし――
あの夢よ!
四日ばかりも前の朝なりし。
[it-k053] いつしかに正月も過ぎて
いつしかに正月も過ぎて、
わが生活が
またもとの道にはまり来れり。
[it-k052] すっぽりと蒲団をかぶり
すっぽりと蒲団をかぶり、
足をちぢめ、
舌を出してみぬ、誰にともなしに。
[it-k051] やみがたき用を忘れ来ぬ
やみがたき用を忘れ来ぬ――
途中にて口に入れたる
ゼムのためなりし。