病みてあれば心も弱るらむ!
さまざまの
泣きたきことが胸にあつまる。
Author Archives: 石川啄木
[it-k117] 医者の顔色をぢっと見し外に
医者の顔色をぢっと見し外に
何も見ざりき――
胸の痛み募る日。
[it-k116] 廻診の医者の遅さよ!
廻診の医者の遅さよ!
痛みある胸に手をおきて
かたく眼をとづ。
[it-k115] 人間のその最大のかなしみが
人間のその最大のかなしみが
これかと
ふっと目をばつぶれる。
[it-k114] 春の雪みだれて降るを
春の雪みだれて降るを
熱のある目に
かなしくも眺め入りたる。
[it-k113] 氷嚢の下より
氷嚢の下より
まなこ光らせて、
寝られぬ夜は人をにくめる。
[it-k100] ぼんやりとした悲しみが
ぼんやりとした悲しみが、
夜となれば、
寝台の上にそっと来て乗る。
[it-k147] 今日もまた胸に痛みあり
今日もまた胸に痛みあり。
死ぬならば、
ふるさとに行きて死なむと思ふ。
[it-k004] 咽喉がかわき
咽喉がかわき、
まだ起きてゐる果物屋を探しに行きぬ。
秋の夜ふけに。
[it-k181] 今日ひょっと近所の子等と遊びたくなり
今日ひょっと近所の子等と遊びたくなり、
呼べど来らず。
こころむづかし。