わが庭の白き躑躅を
薄月の夜に
折りゆきしことな忘れそ
Category Archives: 一握の砂
[it-i092] 煙 – 二 (45)
わが村に
初めてイエス・クリストの道を説きたる
若き女かな
[it-i093] 煙 – 二 (46)
霧ふかき好摩の原の
停車場の
朝の虫こそすずろなりけれ
[it-i094] 煙 – 二 (47)
汽車の窓
はるかに北にふるさとの山見え来れば
襟を正すも
[it-i095] 煙 – 二 (48)
ふるさとの土をわが踏めば
何がなしに足軽くなり
心重れり
[it-i096] 煙 – 二 (49)
ふるさとに入りて先づ心傷むかな
道広くなり
橋もあたらし
[it-i097] 煙 – 二 (50)
見もしらぬ女教師が
そのかみの
わが学舎の窓に立てるかな
[it-i098] 煙 – 二 (51)
かの家のかの窓にこそ
春の夜を
秀子とともに蛙聴きけれ
[it-i099] 煙 – 二 (52)
そのかみの神童の名の
かなしさよ
ふるさとに来て泣くはそのこと
[it-i100] 煙 – 二 (53)
ふるさとの停車場路の
川ばたの
胡桃の下に小石拾へり