年ごとに肺病やみの殖えてゆく
村に迎へし
若き医者かな
Category Archives: 一握の砂
[it-i082] 煙 – 二 (35)
ほたる狩
川にゆかむといふ我を
山路にさそふ人にてありき
[it-i083] 煙 – 二 (36)
馬鈴薯のうす紫の花に降る
雨を思へり
都の雨に
[it-i084] 煙 – 二 (37)
あはれ我がノスタルジヤは
金のごと
心に照れり清くしみらに
[it-i085] 煙 – 二 (38)
友として遊ぶものなき
性悪の巡査の子等も
あはれなりけり
[it-i086] 煙 – 二 (39)
閑古鳥
鳴く日となれば起るてふ
友のやまひのいかになりけむ
[it-i087] 煙 – 二 (40)
わが思ふこと
おほかたは正しかり
ふるさとのたより着ける朝は
[it-i088] 煙 – 二 (41)
今日聞けば
かの幸うすきやもめ人
きたなき恋に身を入るるてふ
[it-i089] 煙 – 二 (42)
わがために
なやめる魂をしづめよと
讃美歌うたふ人ありしかな
[it-i090] 煙 – 二 (43)
あはれかの男のごときたましひよ
今は何処に
何を思ふや