ひとところ、畳を見つめてありし間の
その思ひを、
妻よ、語れといふか。
Category Archives: 短歌
[it-k005] 遊びに出て子供かへらず
遊びに出て子供かへらず、
取り出して
走らせて見る玩具の機関車。
[it-i112] 忘れがたき人人 – 一 (11)
友われに飯を与へき
その友に背きし我の
性のかなしさ
[it-k113] 氷嚢の下より
氷嚢の下より
まなこ光らせて、
寝られぬ夜は人をにくめる。
[it-k043] いつまでか
いつまでか、
この見飽きたる懸額を
このまま懸けておくことやらむ。
[it-i054] 煙 – 二 (7)
わかれをれば妹いとしも
赤き緒の
下駄など欲しとわめく子なりし
[it-i180] 忘れがたき人人 – 一 (79)
何事も思ふことなく
日一日
汽車のひびきに心まかせぬ
[it-k069] 何故かうかとなさけなくなり
何故かうかとなさけなくなり、
弱い心を何度も叱り、
金かりに行く。
[it-k106] もう嘘をいはじと思ひき
もう嘘をいはじと思ひき――
それは今朝――
今また一つ嘘をいへるかな。
[it-k149] 病みて四月
病みて四月――
そのときどきに変りたる
くすりの味もなつかしきかな。
病みて四月――
その間にも、猶、目に見えて、
わが子の背丈のびしかなしみ。