原稿紙にでなくては
字を書かぬものと、
かたく信ずる我が児のあどけなさ!
Category Archives: 短歌
[it-k004] 咽喉がかわき
咽喉がかわき、
まだ起きてゐる果物屋を探しに行きぬ。
秋の夜ふけに。
[it-i194] 忘れがたき人人 – 一 (93)
死ぬばかり我が酔ふをまちて
いろいろの
かなしきことを囁きし人
[it-k174] 解けがたき
解けがたき
不和のあひだに身を処して、
ひとりかなしく今日も怒れり。
[it-i162] 忘れがたき人人 – 一 (61)
みぞれ降る
石狩の野の汽車に読みし
ツルゲエネフの物語かな
[it-k002] 眼閉づれど
眼閉づれど、
心にうかぶ何もなし。
さびしくも、また、眼をあけるかな。
[it-k128] いま、夢に閑古鳥を聞けり
いま、夢に閑古鳥を聞けり。
閑古鳥を忘れざりしが
かなしくあるかな。
[it-i014] 煙 – 一 (14)
城址の
石に腰掛け
禁制の木の実をひとり味ひしこと
[it-k169] 或る市にゐし頃の事として
或る市にゐし頃の事として、
友の語る
恋がたりに嘘の交るかなしさ。
[it-k129] ふるさとを出でて五年
ふるさとを出でて五年、
病をえて、
かの閑古鳥を夢にきけるかな。