友はみな或日四方に散り行きぬ
その後八年
名挙げしもなし
[it-i044] 煙 – 一 (44)
わが妻のむかしの願ひ
音楽のことにかかりき
今はうたはず
[it-i043] 煙 – 一 (43)
近眼にて
おどけし歌をよみ出でし
茂雄の恋もかなしかりしか
[it-i042] 煙 – 一 (42)
そのむかし秀才の名の高かりし
友牢にあり
秋のかぜ吹く
[it-i041] 煙 – 一 (41)
夢さめてふっと悲しむ
わが眠り
昔のごとく安からぬかな
[it-i040] 煙 – 一 (40)
見よげなる年賀の文を書く人と
おもひ過ぎにき
三年ばかりは
[it-i039] 煙 – 一 (39)
人ごみの中をわけ来る
わが友の
むかしながらの太き杖かな
[it-i038] 煙 – 一 (38)
興来れば
友なみだ垂れ手を揮りて
酔漢のごとくなりて語りき
[it-i037] 煙 – 一 (37)
先んじて恋のあまさと
かなしさを知りし我なり
先んじて老ゆ
[it-i036] 煙 – 一 (36)
わがこころ
けふもひそかに泣かむとす
友みな己が道をあゆめり