眼を病みて黒き眼鏡をかけし頃
その頃よ
一人泣くをおぼえし
[it-i034] 煙 – 一 (34)
茨島の松の並木の街道を
われと行きし少女
才をたのみき
[it-i033] 煙 – 一 (33)
田舎めく旅の姿を
三日ばかり都に曝し
かへる友かな
[it-i032] 煙 – 一 (32)
そのかみの学校一のなまけ者
今は真面目に
はたらきて居り
[it-i031] 煙 – 一 (31)
自が才に身をあやまちし人のこと
かたりきかせし
師もありしかな
[it-i030] 煙 – 一 (30)
おどけたる手つきをかしと
我のみはいつも笑ひき
博学の師を
[it-i029] 煙 – 一 (29)
蘇峯の書を我に薦めし友早く
校を退きぬ
まづしさのため
[it-i028] 煙 – 一 (28)
かぎりなき知識の慾に燃ゆる眼を
姉は傷みき
人恋ふるかと
[it-i027] 煙 – 一 (27)
解剖せし
蚯蚓のいのちもかなしかり
かの校庭の木柵の下
[it-i026] 煙 – 一 (26)
愁ひある少年の眼に羨みき
小鳥の飛ぶを
飛びてうたふを