二日前に山の絵見しが
今朝になりて
にはかに恋しふるさとの山
[it-i054] 煙 – 二 (7)
わかれをれば妹いとしも
赤き緒の
下駄など欲しとわめく子なりし
[it-i053] 煙 – 二 (6)
ふるさとの
かの路傍のすて石よ
今年も草に埋もれしらむ
[it-i052] 煙 – 二 (5)
その昔
小学校の柾屋根に我が投げし鞠
いかにかなりけむ
[it-i051] 煙 – 二 (4)
亡くなれる師がその昔
たまひたる
地理の本など取りいでて見る
[it-i050] 煙 – 二 (3)
ふと思ふ
ふるさとにゐて日毎聴きし雀の鳴くを
三年聴かざり
[it-i049] 煙 – 二 (2)
やまひある獣のごとき
わがこころ
ふるさとのこと聞けばおとなし
[it-i048] 煙 – 二 (1)
ふるさとの訛なつかし
停車場の人ごみの中に
そを聴きにゆく
[it-i047] 煙 – 一 (47)
糸切れし紙鳶のごとくに
若き日の心かろくも
とびさりしかな
[it-i046] 煙 – 一 (46)
わが恋を
はじめて友にうち明けし夜のことなど
思ひ出づる日