石ひとつ
坂をくだるがごとくにも
我けふの日に到り着きたる
[it-i024] 煙 – 一 (24)
そのかみの愛読の書よ
大方は
今は流行らずなりにけるかな
[it-i023] 煙 – 一 (23)
西風に
内丸大路の桜の葉
かさこそ散るを踏みてあそびき
[it-i022] 煙 – 一 (22)
神有りと言ひ張る友を
説きふせし
かの路傍の栗の樹の下
[it-i021] 煙 – 一 (21)
盛岡の中学校の
露台の
欄干に最一度我を倚らしめ
[it-i020] 煙 – 一 (20)
ストライキ思ひ出でても
今は早や吾が血躍らず
ひそかに淋し
[it-i019] 煙 – 一 (19)
夏休み果ててそのまま
かへり来ぬ
若き英語の教師もありき
[it-i018] 煙 – 一 (18)
今は亡き姉の恋人のおとうとと
なかよくせしを
かなしと思ふ
[it-i017] 煙 – 一 (17)
花散れば
先づ人さきに白の服着て家出づる
我にてありしか
[it-i016] 煙 – 一 (16)
学校の図書庫の裏の秋の草
黄なる花咲きし
今も名知らず