[st-w40] 四 深林の逍遥、其他 – 母を葬るのうた

うき雲はありともわかぬ大空の
月のかげよりふるしぐれかな
きみがはかばに
きゞくあり
きみがはかばに
さかきあり

くさはにつゆは
しげくして
おもからずやは
そのしるし

いつかねむりを
さめいでて
いつかへりこん
わがはゝよ

紅羅ひく子も
ますらをも
みなちりひじと
なるものを

あゝさめたまふ
ことなかれ
あゝかへりくる
ことなかれ

はるははなさき
はなちりて
きみがはかばに
かゝるとも

なつはみだるゝ
ほたるびの
きみがはかばに
とべるとも

あきはさみしき
あきさめの
きみがはかばに
そゝぐとも

ふゆはましろに
ゆきじもの
きみがはかばに
こほるとも

とほきねむりの
ゆめまくら
おそるゝなかれ
わがはゝよ

[st-w13] 一 秋の思 – 小詩二首 二

しづかにてらせる
月のひかりの
などか絶間なく
ものおもはする
さやけきそのかげ
こえはなくとも
みるひとの胸に
忍び入るなり

なさけは説くとも
なさけをしらぬ
うきよのほかにも
朽ちゆくわがみ
あかさぬおもひと
この月かげと
いづれか声なき
いづれかなしき