この黄昏の野原のなかを
耳のながい象たちがぞろりぞろりと歩いている。
黄色い夕月が風にゆらいで
あちこちに帽子のやうな草つぱがひらひらする。
さびしいですか お嬢さん!
ここに小さな笛があつて その音色は澄んだ緑です。
やさしく歌口をお吹きなさい
とうめいなる空にふるへて
あなたの蜃気楼をよびよせなさい
思慕のはるかな海の方から
ひとつの幻像がしだいにちかづいてくるやうだ。
それはくびのない猫のやうで 墓場の草影にふらふらする
いつそこんな悲しい暮景の中で 私は死んでしまひたいのです。お嬢さん!
Tag Archives: 暮
[it-k146] 月に三十円もあれば、田舎にては
月に三十円もあれば、田舎にては、
楽に暮せると――
ひょっと思へる。
[st-w08] 一 秋の思 – 秋に隠れて
わが手に植えし白菊の
おのづからなる時くれば
一もと花の暮陰に
秋に隠れて窓にさくなり
[st-w34] 三 生のあけぼの – 暮
たれか聞くらん暮の声
霞の翼雲の帯
煙の衣露の袖
つかれてなやむあらそひを
闇のかなたに投げ入れて
夜の使の蝙蝠の
飛ぶ間も声のをやみなく
こゝに影あり迷あり
こゝに夢あり眠あり
こゝに闇あり休息あり
こゝに永きあり遠きあり
こゝに死ありとうたひつゝ
草木にいこひ野にあゆみ
かなたに落つる日とともに
色なき闇に暮ぞ隠るゝ